大判例

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福岡高等裁判所 昭和55年(ネ)592号 判決

主文

原判決中被控訴人らに関する部分を取消す。

被控訴人らの本件各申請を却下する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

事実

控訴人は主文と同旨の判決を求め、被控訴人らは「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠の関係は、次のとおり補足するほか、原判決事実摘示と同一(ただし原判決の目次を除く九枚目裏一〇、一一行目の各「民法労連」を各「民放労連」と、一六枚目表末行の「第三九号証の各一及び二」を「第三九号証の各一ないし九」と、それぞれ訂正し、同裏一〇行目「第八五号証の一ないし三」の次に「の各A、B」を挿入する。)であるから、これを引用する。

一  控訴人の補足主張

1  控訴人会社の発足と業務委託契約

昭和三五、六年頃から佐賀県に民間放送テレビ局を開設しようとする動きがあつたが、同県には商業放送としての民間放送テレビ局の経営を可能とするだけの経済基盤が確立されていなかつたこと及び熊本、長崎、福岡等他県のテレビ局の電波が入つて来るため、準広域圏と考えられ、かつ、VHF波チャンネルの余地がなかつたことから、他県より大巾に遅れ、昭和四二年一一月一日付でようやく控訴人会社が初めて民間放送テレビUHF局として予備免許を取得し、昭和四四年四月に正式に民間放送テレビ局として業務を開始した。しかし、UHF局はその使用電波の特質上中継局を多数必要とし、そのため、VHF局に較べて設備費、消費電力とも各々三倍を要するといわれていた。控訴人会社は、右悪条件に加え、佐賀県の経済基盤の弱さから、直接の広告依頼が少く自社独自に売上げてうる収入は少く、収入の大部分をもっぱらキー局(フジテレビをキー局とするネットワークに加入し。テレビ西日本を準キー局としている。)からの収入に頼らざるをえないため、発足の当初から極度の経費節減を必要とした。

右のような事情から、控訴人会社は、最初、パンチテープの作成、テロップ、作成、フィルムスプライス、放送確認書の記入等のいわゆる四種業務についてはその一切を準キー局、テレビ西日本の四種業務の中に組み込み同社において処理して貰うことにしていたが、当時の同社の本社所在地である北九州市と佐賀との往復に相当の時間を要することから、右の構想は実現困難となり、代つて、当時テレビ西日本の四種業務を全般的に受託していた東筑印刷株式会社(以下、「東筑印刷」ともいう。)に、右四種業務に加えタイプ印刷業務を一括して請負わせる業務委託の方式により処理することとなつた。

かくして、東筑印刷は、全く独自に従業員の募集、採用、労働条件の決定、従業員の技術指導を行い、同社社長の長男荒牧孝介が責任者として佐賀に派遣され、業務の指導、監督を行い、右委託にかかる業務は同社の雇傭した同社従業員によつて円滑に処理され、特段の問題の生ずることもなかつた。

ところが、東筑印刷は、その社内事情により右委託業務の継続が困難となつたことから、昭和四六年四月一日以降、佐賀製帳社印刷(以下、「製帳社」ともいう。)が控訴人会社と業務委託契約を締結して東筑印刷に代つて右委託業務である四種業務及びタイプ印刷業務を継続して行うこととなり、東筑印刷が委託業務遂行のため雇傭していた従業員もそのまま引き継いだ。

かくして、控訴人会社と製帳社との間の業務委託契約関係は、昭和四九年一一月二九日その契約内容を現況に合わせて改訂したものの、昭和五〇年六月三日製帳社が同契約の解除の申入をなすまで継続されて来た。

2  製帳社の企業としての独自性

製帳社は、佐賀市紺屋町に本社を有し、印刷全般を主たる業務とする個人企業であつて、創業昭和八年という歴史を持ち、佐賀県下における印刷業者として有数の企業である。経営主は山崎忠次名義となつているが、実質上経営を担当しているのは忠次の息子山崎巖であり、控訴人会社とは資本的にも、人事的にも全く関連がない。そして、カラー印刷からタイプ印刷まで多種に亘る営業内容を有し、印刷一般において利用されている写植についても十分の知識を有していたところ、従来からの印刷業を主体としつつも、更に本件四種業務についてその営業部門を拡大し、企業として発展を企図して、控訴人会社との間の業務委託契約に応じたものであつて、いわゆる人入れ稼業、すなわち企業として独自の営業を有しない労働者供給事業を行うことを目的とする者とは全く異質のものである。

しかして、製帳社は、責任者山崎巖(以下、単に「山崎」というときは「山崎巖」を指す。)において、被控訴人らの雇入れの際面接を実施し、雇傭契約を締結し、独自に従業員に対する賃金の決定・支給を行つて来ている。被控訴人らが労働組合を結成した後は、製帳社がこれと団体交渉を行い、賃金等労働条件を決定して来たものであり、これに関し控訴人会社と協議したり指示を受けたりしたことは全くない。

3  被控訴人らの解雇に至る事情

製帳社は、昭和四八年当時、被控訴人ら四名のほか蘭節子、小池富子、野口鈴子、蒲原麗子、高木啓子、馬場悦子らを雇入れ、右業務委託にかかる四種業務及びタイプ印刷業務に従事させた。

ところが、被控訴人らを含む右従業員らは、製帳社が当時の佐賀県下における印刷関係従業員の水準により支給していた賃金額に対し不満を持ち始め、昭和四七年夏を皮切りに四八年、四九年冬と過大な賃上げ要求を行い、特に昭和四九年四月一八日労働組合を結成して以来というもの、客観的な経済情勢、経営の実態を全く無視した諸要求を掲げ、これが容れられないとなると過度な争議行為を反覆し、昭和五〇年四月には一カ月のうち一一日間は何らかの形によるストライキを行い、ストライキが行われない日においても少い日で一人、多い日には五人もが欠勤して業務を停滞させ、五月に入るとサポタージュ戦術により著しく業務を滞留させて、経営責任者山崎の指図には全くしたがおうとしないばかりか、滞留した作業を山崎が自ら処理しようとするとこれを妨害する行為にまで出るようになつた。四月以来のスト攻勢により疲労困憊の極に達した山崎は、経営意欲を完全に失い、同年六月一日、控訴人会社との本件業務委託契約の解消を決意し、翌二日夕方、被控訴人ら従業員にその旨告知し、同月三日、控訴人会社に対し業務委託契約解除の申入をした。控訴人会社関係者は山崎に翻意を促したが、同人の決意は堅く、同月五日、被控訴人らを含む右委託業務に従事していた従業員全員に解雇通告をなし、解雇予告手当を支払い、同年七月二八日には退職金を支払つた。

右のとおり、製帳社が被控訴人らを解雇するに至つたのは、被控訴人ら本件委託業務に携つていた従業員が殊更過大な要求に固執して過激な争議行為に終始したことに起因するものであつて、企業防衛上止むを得ざる措置というべきものであり、控訴人会社は右解雇になんら関与していないのであるから、右解雇に関して控訴人会社の不当労働行為を云々するのは見当違いも甚しい。

4  被控訴人らの解雇の自認

被控訴人らは、昭和五〇年六月五日、山崎より解雇通告を受けたあと全員異議なく解雇予告手当を受領し、遅くとも同年七月一〇日までには製帳社に対し離職証明書の交付を求めたうえ、退職金を受領し、失業保険金の支給も受けている。すなわち、被控訴人らは、明らかに、製帳社との間に雇傭関係が存在したことの前提に立ち、右雇傭関係が右解雇により終了したことを承諾し、これに伴う私法上、公法上の権利を行使しているのであるから、控訴人会社に対して雇傭関係の存在することを前提として従業員たる地位の保全を求める本件仮処分申請は全くの矛盾であつて、到底容認し難い。

5  昭和四九年の本件業務委託契約改訂の事情

控訴人会社が本件業務を外注委託とすることはテレビ西日本の形式を真似たもので、その契約書の様式もテレビ西日本と東筑印刷との間の契約書の書式をそのまま導入したものであつたため、昭和四六年製帳社が本件業務委託を引き継いだ際若干の手直しを加えたものの、未だ実情に合致しない点や全く死文化した条項が残されていて、早晩改訂の必要のあるものであつた。

控訴人会社は、製帳社との本件業務委託契約は純粋な請負契約であり、請負人である製帳社との間に人的にも、資本的にも関係がないので職業安定法(以下「職安法」という。)違反の問題は起りえないと確信していたが、民間放送連盟の方から大阪の朝日放送において電話交換業務の外部委託が職安法違反として問題となつているとの情報をえたことなどから、同放送の事案を調査して、製帳社との業務委託契約が同法に抵触するか否かの検討を加えることとした。調査の結果、本件業務委託契約は、朝日放送の場合とは根本的に相違しており、職安法違反にはならないものと判断したが、強いて問題点を指摘すれば、製帳社が本件業務に使用している写植機、ニアックライター、カラーテロップ機等が控訴人会社の所有物であるので、この点は一応検討を要するとのことであつた。これらの機械、器具は、特殊なものであるため、控訴人会社の発足当初、東筑印刷に業務委託する際、止むなく控訴人会社において取り揃えたという沿革があり、それがそのまま踏襲されて来たという事情に由来するものであるので職安法違反には当らないと考えられたが、僅かこの一事の故に職安法違反とされては甚だ不本意であるから、いずれ製帳社へ売却した方が良かろうというものであつた。

以上のような事情から、右検討結果も加味して控訴人会社は、製帳社との間の本件業務委託契約書を改訂したのであつて、職安法潜脱の意思で右改訂を実施したのではない。

6  被控訴人らの社員化要求について

控訴人会社は、被控訴人らから一度として社員化の要求を受けたことはなかつたし、被控訴人らと如何なる形であれ同人らの身分に関して交渉を持つたこともない。控訴人会社とサガテレビ労働組合との団交においても被控訴人らの社員化要求問題や職安法違反の有無が議題として取上げられ、論議されたことは一度もなかつた。被控訴人らが控訴人会社に対して長期的に社員化要求をしていたなどというのは全くの誤謬である。

7  派遣労働者と派遣先企業との間における労働契約の成立について

雇傭は一個の諾成契約であり、雇傭主と被傭者間の合意―通常は申込と承諾―によつて成立する。そして、この諾成的な契約によつて当事者間に一種の社会関係としての労働関係が成立するのである。従つて、いわゆる業務委託契約に基づき、派遣元から派遣された労働者が、事実上派遣先企業の経営組織の中に組み込まれて作業するという形態の就労関係の下に置かれている場合においても、この事実関係だけから直ちに労働契約の成立を肯認するのは相当でない。労働契約も一つの債権契約である以上、労使の合意ないし契約の存在が必要不可欠の大前提である。すなわち、経験則ないし一般社会通念上、派遣労働者の側では派遣先企業を自らの使用者と認め、その指揮・命令に従つて労務を提供する意思を有し、他方派遣先企業の側ではその労務に対する報酬として直接労働者に対し賃金を支払う意思を有するものと推認するに足るだけの事情が存在するのでなければ、黙示的にも労働契約の成立を認めることはできないものというべきである。

二  被控訴人らの補足主張

1  使用従属関係の検討の重要性

本件のように事業場内下請労働者(派遣労働者)と親企業(派遣先企業)との間の労働契約の有無を判断するためには、形式的な労働契約の有無にとらわれることなく、両者間の労働実態を十分に検討し、その中に表われて来る使用従属関係の有無を重要視する必要がある。以下、控訴人会社と被控訴人らとの間に存在する使用従属関係についての主張を補足する。

2  経済的従属関係

製帳社は、山崎巖の父である山崎忠次が昭和八年頃創設した個人企業の印刷所であつて、その営業内容は、一般事務印刷、活版印刷、オフセット印刷、タイプ印刷、ビニール加工等印刷一般に及んでいる。しかし東筑印刷から本件委託業務を引き継ぐ当時においては、印刷所及び事務所兼自宅を佐賀市紺屋町に有し、従業員僅か三、四名の典型的な家内工業的小企業に過ぎなかつた。製帳社は、昭和四六年四月、控訴人会社との間に本件業務委託契約を締結したが、本件委託業務を行う場所は控訴人会社の社屋内と限定されたうえ、同所においては本件委託業務以外の他の業務を行うことを禁止された。したがつて、同じ製帳社の名の下に遂行されていたものの、本件委託業務と紺屋町における従前からの印刷業務との間には、人的にも物的にも全く交流がなく、本件委託業務は完全に控訴人会社の支配体制の中に組み込まれていて、製帳社による指揮、命令、監督等を一切必要としなかつたものである。すなわち、本件委託業務が東筑印刷から製帳社に引き継がれたことにはなんらかかわりなく、控訴人会社と被控訴人らとの間に労働関係が成立し継続していたのである。

また、本件委託業務の遂行に必要な機械、器具は、タイプを除きすべて控訴人会社所有のものが利用され、更に事務用品、消耗品はもとより印刷用紙に至るまで控訴人会社から無料で支給されていたのであるから、本件委託業務の対価である請負代金は、実質的にはその殆んどすべてが人件費といつて差支えのないものであり(製帳社の取り分はたかだか月額五万円程度に過ぎなかつた)、かつ、その請負業務量が一定していることもあつて、製帳社の企業努力により営業収入の拡大を図る余地のないものであつた。したがつて、本件委託業務に従事する被控訴人らの賃金は、控訴人会社が製帳社宛に支払う請負代金額によつて決定されてしまうのであり、控訴人会社は実質上被控訴人らの賃金その他の経済的待遇を決定する権限を把握していたのである。

製帳社は実質的には被控訴人らの労働を指揮、監督していなかつたばかりでなく、賃金等の経済的待遇を決定する権限をも有していなかつたのであつて、もつぱら職安法四四条の規制を潜脱するために、偽装的、名目的に、被控訴人らの形式上の雇傭主となり、労災保険等の契約者となつたに過ぎないのである。

3  組織的従属性

被控訴人らが本件委託業務の遂行として供給する各労働は、控訴人会社の放送業務に組織的、不可分一体的に組み込まれており、そのうえ、昭和四九年に本件業務委託契約が改訂されるまで、その労働提供の場所も控訴人会社社屋内と限定されていたのである。控訴人会社は、職安法違反が問題視されるに至り、これを回避するため、昭和四九年に本件業務委託契約書を改訂し、作業場所を限定する契約文言を意識的に削除したに過ぎない。また、被控訴人らの労務の提供は、控訴人会社の放送業務に関連するものに限定され、かつ、控訴人会社による指揮、監督に直接服していた。

4  人格的従属性

被控訴人らの勤務時間は、控訴人会社の勤務体制にしたがつて決定され、時間外労働、時間外呼び出しも、控訴人会社の放送業務の都合によつて一方的に行われ、被控訴人らにおいても、自らの行う労務の提供が控訴人会社と製帳社間に締結された業務委託契約に限定されるとの意識は全くなく、控訴人会社の放送業務に関連するものである限り、その指示のまま労務の提供を続けていたのである。しかして、その労務の提供についての注意、叱責は、控訴人会社の各担当者から被控訴人らに対し直接行われ、製帳社を介して行われたことは殆んどない。また、被控訴人らの労務提供上のミスに関し、控訴人会社がスポンサーに賠償金を支払うことがあつても、製帳社が控訴人会社から損害賠償の請求を受けたことはない。被控訴人らは、その労務の提供に関し、控訴人会社に人格的に従属した関係に置かれていたのである。

5以上のとおり、親企業である控訴人会社と下請労働者である被控訴人らとの間には、経済的、組織的、人格的各側面において使用従属関係が形成されていたことが明白であるから、両者の間に労働契約関係が成立していたものというべきである。

三  新たな疎明<省略>

理由

一被控訴人らが、製帳社に形式上雇傭されて、テレビ放送を業とする控訴人会社に派遣され、同社社屋内においてスポットCMのフィルムスプライス及びプレビュー、放送確認書の記入、写植機によるニューステロップの作製、自動番組制御装置用パンチテープの作製のいわゆる四種業務及びタイプ印刷の各業務に就労していたものであることは、当事者間に争いがない。

しかして、被控訴人らは、被控訴人らの如き事業場内下請労働者(派遣労働者)と親企業(派遣先企業)との間の労働契約の有無を判断するためには、形式的な労働契約の有無にとらわれることなく、両者間に形成された労働実態に着目し、その中に表われた使用従属関係の有無を重要視すべきところ、製帳社はもつぱら職安法四四条の規制を潜脱するために、偽装的、名目的に雇傭主となつたに過ぎず、被控訴人らとの間に実質的な労働契約関係である使用従属関係の形成がなく、寧ろ、被控訴人らと控訴人会社との間に、経済的・組織的・人格的使用従属関係の成立があり、したがつて、(イ)被控訴人らが、控訴人会社の社屋内で勤務を開始したときに、両者間に労働契約関係が成立している(ロ)仮に、そうでないとしても、少くとも、両者間には黙示的に労働契約関係が成立していたとみることができる(ハ)仮に、被控訴人らと製帳社との間に締結された労働契約が有効であるとしても、被控訴人らと控訴人会社及び製帳社間に労働契約が二重に成立していたとみることができるのであるから、被控訴人らはいずれも控訴人会社の従業員の地位にあつたものである旨主張する。

しかしながら、労働契約は、労働者が使用者との間に、その使用者の指揮、監督を受けて労務に服する義務を負う一方、その対価として賃金を受ける権利を取得することを内容とする債権契約であり、したがつて、一般の契約と同様に契約締結者の意思の合致によつて始めて成立するものであるところ、被控訴人らは製帳社との間に明示の労働契約を締結したものであつて、控訴人会社との間に明示の労働契約を締結したものでないことは、被控訴人らの主張自体から明白である。

もつとも、労働契約は、前記のように労働者と使用者との間に強弱の差はあれ何らかの程度においていわゆる使用従属関係を生じさせるものであるから、特定の当事者間に事実上使用従属関係が存在するということは、その間に労働契約が成立していることを推測させる一応の徴表であると言えないことはない。しかし、企業がその業務を行うについて必要な労働力を獲得する手段は、直接個々の労働者との間に労働契約を締結することに限定されているわけではなく、広く外注と称せられる種々の方法が存するのが実情であつて、その場合においても個々の労働者の労働力は何らかの意味でその業務組織に組み込まれるか少くともその業務活動を分担することとなるから、その限度では労働者と使用者との間に強弱の差はあつても何らか事実上の使用従属関係を生ずることがあるものというべきである。従つて、当事者間の意思の合致を全く問題とすることなしに、単に使用従属関係が形成されているという一事をもつて直ちに労働契約が成立したとすることはできない。

二しかし、労働契約といえども、もとより黙示の意思の合致によつても成立しうるものであるから、事業場内下請労働者(派遣労働者)の如く、外形上親企業(派遣先企業)の正規の従業員と殆んど差異のない形で労務を提供し、したがつて、派遣先企業との間に事実上の使用従属関係が存在し、しかも、派遣元企業がそもそも企業としての独自性を有しないとか、企業としての独立性を欠いていて派遣先企業の労務担当の代行機関と同一視しうるものである等その存在が形式的名目的なものに過ぎず、かつ、派遣先企業が派遣労働者の賃金額その他の労働条件を決定していると認めるべき事情のあるときには、派遣労働者と派遣先企業との間に黙示の労働契約が締結されたものと認めるべき余地があることはいうまでもない。

そこで、控訴人会社が本件四種業務及びタイプ印刷業務について業務委託契約を締結し事業場内下請労働者の派遣を受入れるに至つた経緯、その派遣労働者の労働の実態、派遣元企業(業務受託企業)の性格、派遣労働者の賃金その他労働条件決定の経緯等について、以下検討を加える。

(一)  控訴人会社の発足と東筑印刷との業務委託契約

前記の当事者間に争いのない事実と<証拠>によれば、次の事実が一応認められ、これに反する疎明はない。

佐賀県に民間放送テレビ局を開設しようとの動きは早くからあつたが、同県内においてはVHF波帯チャンネルの余地がなく、他県からのVHF波帯の電波を受信できること、佐賀県の経済的基盤が弱く商業放送である民間放送テレビ局の経営を可能とするだけの広告収入をうることが困難であることなどの事情から、九州他県の各地方民間放送テレビ局に約一〇年遅れて、昭和四四年四月一日、控訴人会社が佐賀県における唯一の民間放送テレビ局として業務を正式に開始した。控訴人会社は、UHF局として開局したものであるが、VHF局に比較して設備費、消費電力等の放送経費が高くなること、同県の経済基盤の弱さから直接の広告依頼による自社独自の広告収入を余り期待できず、収入の大部分をもつぱらキー局(フジテレビをキー局とするネットワークに加入した)からの収入に頼らざるをえないことから、諸経費節減等の経営の合理化により右悪条件の克服を図る経営方針が立てられた。開局当初の予定では、キー局であるフジテレビから送られる番組が大半を占め、残りは同じくフジテレビのネットワーク内にあり準キー局ともいうべきテレビ西日本から送られる番組で間に合わせ、自主番組と呼べるものは極めて僅かのものしか放映しないことにしていた。

控訴人会社においては、テレビ放送業務に精通する者は皆無に等しかつたので、開局準備にあたり、テレビ西日本から助言と指導を受けた。しかして、テレビ西日本は、その業務のうち(一)スポットCMのフィルムプライス及びプレビュー(二)放送確認書の記入(三)写植機によるニューステロップ作成(四)自動番組制御装置にかけるパンチテープの作成(以上、いわゆる「四種業務」)及び印刷業務について、これを東筑印刷に委託して行わせていた。

東筑印刷は、荒牧又輔を代表取締役社長とし、北九州市において印刷業を営むかたわら、テレビ西日本の社屋内に一〇名位の女子従業員を派遣して、右委託にかかる四種業務及び印刷業務を行つていた。荒牧又輔は、息子である荒牧孝介をテレビ西日本での右委託業務の仕事に派遣し、同業務を体得させていた。

控訴人会社も、テレビ西日本からの助言と口添えにしたがい、開局当初から四種業務及び印刷業務についてはこれを東筑印刷に業務委託することにした。

東筑印刷は、控訴人会社との右業務委託契約に基づく業務の実施を荒牧孝介に任せることとし、同人は昭和四四年二月下旬頃から佐賀市内に転居しその準備を開始し、新聞紙上に従業員募集の広告をなし、自ら単独で応募者と面接し、約一〇名の女子従業員を採用した。右募集採用の際、控訴人会社は、面接場所の提供、応募者の面接会場への案内等の便宜は供与したものの、荒牧孝介の行う従業員採用決定に特別の注文を課することも、介入することもなかつた。

荒牧孝介は、採用後直ちに各従業員について、東筑印刷が雇傭主となつて厚生年金、社会保険、失業保険に加入する手続をし、東筑印刷の本社従業員の給与水準を基準として各人の基本賃金額を定め、同じく本社従業員の場合に準じて勤務時間(拘束九時間の八時間労働)、休日その他の労働条件を定め、勤務時間を把握するためのタイムカードも東筑印刷の本社から取り寄せた。荒牧孝介が右のとおり従業員の賃金額その他の労働条件を定めるについて、控訴人会社がこれに容喙するようなことは全くなかつた。

荒牧孝介は、また、右新採用従業員に対し、四種業務の技術指導を行い、委託業務の遂行上必要な技能を全て習得させて、開局に備えた。

東筑印刷は、印刷を本来の業務としている関係上、委託業務のうち印刷業務に必要な機械類は自ら調達して同業務を行う場所である控訴人会社社屋内に備えたが、四種業務に必要な機械、器具は、開局当時の価格で金三〇〇万円程度に達する高価な物件であつたこと、控訴人会社のテレビ放送業務上必要不可欠なものであるが、印刷所としては利用度の全くないものであることなどの事情から、控訴人会社の側において四種業務に必要なニアックライター、写植機その他の機械、器具を購入しこれを社内に備付けて、東筑印刷に使用させることとした。

荒牧孝介は、右従業員らをして、控訴人会社の社屋内の控訴人会社の指定する場所において、右の委託にかかる四種業務及び印刷業務に従事させ、自らも同所に出勤して従業員の指揮、監督に当り業務の円滑な遂行に努めていた。ところが、昭和四四年秋に入り、父である東筑印刷代表取締役社長荒牧又輔が健康を害したことにより、荒牧孝介は、東筑印刷の北九州の本社の経営をも担当せざるをえなくなり、そのため、佐賀に常駐して本件委託業務の遂行を直接指揮、監督することができなくなつたことから、同年一一月、本件委託業務に従事させていた従業員のうち、年令的にも性格的にも信頼のおける秋山玲子を常駐責任者に任命して、同女をして本件委託業務遂行の指揮、監督に当らせることとし、同月五日付の文書をもつてその旨を控訴人会社にも通知した。かくして、以後、荒牧孝介は、週一回程度の割合で控訴人会社の社屋に赴いて業務の進捗状況に目を通したり従業員に給料を手渡したりすることで足りるようになつた。

(二)  東筑印刷から製帳社への業務引き継ぎ

<証拠>によれば、次の事実が一応認められ、<反証排斥略>、他にこれを左右するに足りる疎明はない。

昭和四五年秋頃から、荒牧孝介は、東筑印刷の社内事情により、同本社の営業に専念せざるをえなくなり、本件委託業務の進捗状況の監督のため週一回程度佐賀市内の控訴人会社社屋に赴いて来る余裕もなくなつて来たことから、本件委託業務を一括して他の業者に引き継いで貰うことを考え、同年一〇月頃、控訴人会社と取引がありこれに出入りしていた、佐賀市内の印刷業者である製帳社の山崎巌に右業務の引き継ぎ方を打診した。

製帳社は、山崎巖の父である山崎忠次が昭和八年に創設した個人企業の印刷所であつて、当時佐賀市紺屋町に事業場を有し、その営業内容は、一般事務印刷、活版印刷、オフセット印刷、タイプ印刷、ビニール加工等印刷全般に及んでいた。(この点は、当事者間に争いがない。)製帳社は、控訴人会社とは、資本的にも、人的・組織的にも独立した企業であつた。その企業規模は小さいものの、製版部門については強力な外注先を傘下に擁し、新鋭の印刷機械設備を有していて、佐賀大学、九州電力、県警察本部等特に信用の要求される各注文主からの受注が多く、佐賀県内における有力な印刷業者の一つである。しかして、製帳社は、本件委託業務の一部であるタイプ・印刷の業務を本来の業務としていたこと、本件委託業務を引き受けることにより将来性のあるテレビ放送の分野に関しても業務を拡張することのできることに魅力を覚えたことから、本件委託業務を引き受けることとした。

かくして、昭和四六年三月、従前東筑印刷が請負つていた本件委託業務を製帳社において引き継いで行うことの合意が成立し、同委託業務に従事させていた従業員との雇傭関係もそのまま製帳社が引き継ぐことになり、控訴人会社も右の委託業務の引き継ぎを了承した。製帳社は、右業務の引き継ぎに当り、タイプ印刷部門に使用するタイプの機械及び輪転機並びにこれに伴う机、椅子その他の什器を備えつけたが、四種業務に必要な機械、器具は従前東筑印刷が使用していた控訴人会社所有のものをそのまま利用することとした。

(三)  製帳社の業務委託契約締結及び被控訴人らとの雇傭契約

<証拠>を綜合すると、次の事実が一応認められ、これに反する疎明はない。

昭和四六年三月、製帳社は、控訴人会社との間に左記条項を内容とする業務委託契約を締結し、同年四月一日から、東筑印刷が従前行つていた本件委託契約業務を引き継いで行うこととなつた。

「控訴人会社(以下「甲」という。)と製帳社(以下「乙」という。)とは、甲のテレビジョン放送番組編成ならびに放送用日刊印刷物の印刷業務に関し、次のとおり契約を締結する。

第一条 甲は乙に、甲のテレビジョン放送番組編成ならびに放送用日刊印刷物の印刷に関する業務を委託し、乙はこれを受託した。

2 乙は前項の業務を、甲の構内に於て行なうものとする。

第二条 甲は、乙の業務遂行のために必要な作業場と電話機を乙に提供し、乙はその借用料として一ヶ月につき家賃二万円(水道・光熱費を含む)と通話料の実費を甲に支払う。

第三条 委託業務の種類は下記のとおりとする。

1  放送番組編成業務(以下「四種業務」という)

(1) スポット、CMのフィルムスプライスおよびプレビュー

(2) 放送確認書の記入

(3) 写真植字機によるニューステロップの作成

(4) 自動番組制御装置用パンチテープの作成

2  印刷業務

(1) 放送進行表の印刷

(2) テレビプログラムの印刷

(3) テレビ切替表の印刷

(4) 番組解説書の印刷

第四条 印刷業務に要する機器類の設備は、乙自らの手によつて行う。ただし、材料たる紙は、甲が支給する。

第五条 乙は、四種業務のために甲が使用を許可した機器類ならびに第二条の貸与物件を善良なる管理者の注意をもつて管理し、消耗、き損した物件ができたときは勿論、そのおそれがあるときは、事前に連絡をとり、業務に支障がないように努力しなければならない。

第六条 乙は、業務の遂行にあたり、特につぎの事項を遵守、了知するとともに、その趣旨を従業員に周知徹底させなければならない。

(1) 乙は常に甲へのサービスの完全なる提供とその改善に努めるとともに、甲の事業の特殊性を認識し、甲の緊急の要請に対しては、直ちに協力すること。

(2) 乙は、甲の構内に勤務する乙の従業員についての保健、衛生ならびに風紀に留意し、清潔かつ、明朗な態度で業務に従事させ、伝染病疾病者、保菌者またはその疑いのある者を就労させないこと。

(3) 乙は、火災・盗難の予防に万全を期するとともにこれに関する甲の指示に従うこと。

(4) 乙は、乙の従業員に異動があつたときは、遅滞なくその氏名と経歴を甲に届出なければならない。

(5) 甲が不適当と認めた場合、乙の従業員を甲の構内から退去させ、あるいは立入らせないことがある。

第七条 本契約に依る委託料を次のように定める。

1  四種業務については、月額二五万円とする。

2  印刷業務については、基本単価にもとずき、出来高に応じて支払う。

印刷物の種類

単価

摘要

放送進行表

原紙一枚につき三五九円

標準枚数一六枚

テレビプログラム

〃 四八八円

〃    三枚

テレビ切替表

〃 四二二円

〃    一枚

番組解説書

〃 二四九円

〃    五枚

第八条 甲は前条委託料を、当月分を翌月一五日に乙に支払う。

第九条 甲または乙は、相手方がこの契約に違反した場合、その是正を催告し、相手方がこれに応じなかつたときはこの契約を解除し、損害賠償を請求することができる。ただし、乙または乙の従業員の故意または過失により、放送業務に重大なる影響を及ぼしたときには、甲は即刻、この契約を解除することが出来る。

第一〇条 この契約の各条項の内容が著しく、実情にそわなくなつたときには、契約期間中といえども、甲乙協議して変更することができる。

第一一条 この契約の履行にあたり、疑義を生じた場合は、信義誠実の原則に従つて円満解決するよう、互に協議の上処理する。

第一二条 この契約の期間は昭和四六年四月一日から昭和四七年三月三一日までとする。

2  前項にかかわらず、当事者双方共三ヶ月前の予告をもつて、本契約を将来に向かい解約することが出来る。

3  期間満了までに、相互に契約終了についての何らの意思表示をしないときは、この契約は同一条件をもつて更に一ヶ年延長するものとし、その後もこの例にならう。」

製帳社においては、前記山崎忠次の息子である山崎巖がその経営の実質上の責任者となつていた。山崎巖は、東筑印刷から本件委託業務を引き継ぐ話が取り極められた後の昭和四六年三月一四日頃、本件委託業務に従事していた東筑印刷の従業員全員をレストランに集め、東筑印刷に代つて製帳社が本件委託業務を担当すること、自分が製帳社の責任であることを告げた。当時、東筑印刷従業員として本件委託業務のうちタイプ印刷部門に従事していた島みどり、木村真知子及び被控訴人安岡すま子の三名は、余りに突然のことに驚くとともに、経営者の一方的な処置に憤り、将来の処遇に不安を感じて、相談のうえ辞職を申出た。四月一日から行う委託業務の遅滞を危惧した山崎は、二度に亘り、被控訴人安岡すま子の自宅を訪れて、辞職を思いとどまるよう要請し、同被控訴人はこれに応じて製帳社による本件委託業務に引き続き従事することにした。しかし、本件委託業務の経営者が東筑印刷から製帳社に代るのを機会に、東筑印刷の従業員として委託業務に就いていた松江多美子、江口和美が退職したため、結局一〇名の従業員のうち前記島、木村の両名を含む四名が退職し、秋山玲子、蘭節子、小池冨子、野口鈴子、蒲原麗子及び被控訴人安岡すま子の六名のみが製帳社従業員として引き続き本件委託業務に従事することとなつた。

かくして、右六名は、製帳社あてに新たに履歴書を提出し、製帳社は、これを同年四月一日新規採用従業員として健康保険、失業保険、厚生年金、その他の必要な諸手続をした。

山崎は、右六名のうちから、秋山玲子を四種業務の総括的な責任者に、被控訴人安岡すま子をタイプ印刷業務の総括的な責任者にそれぞれ任命し、役職手当として秋山に月額五〇〇〇円、被控訴人安岡に月額一〇〇〇円をそれぞれ支給することにした。(なお、同被控訴人の右手当は昭和四八年に二〇〇〇円に増額されたが、昭和四九年四月同被控訴人の要求により交通費に組み込まれることとなり、役職手当は廃止された。)

その後、山崎は、本件委託業務遂行の必要に応じこれに従事させる女子従業員を新規採用して配置したが、その従業員募集の新聞広告には「佐賀製帳社印刷」と雇傭主名を明記し、山崎の責任で採用面接を実施し、新従業員の採否を決定したものであつて、採用従業員に関して控訴人会社から介入を受けることは全くなかつた。そして、新規採用すると、直ちに製帳社が雇傭主として健康保険、厚生年金、失業保険等の手続を履践した。かくして、

(1) 昭和四七年七月秋山玲子が結婚を理由に退職し、

(2) 同年九月、被控訴人牧園京子(旧姓、船津)及び被控訴人陣内たみ子が新規採用され、

(3) 昭和四八年四月、高木啓子(旧姓、中牟田)及び被控訴人森節美が新規採用され、馬場悦子もその頃までに新規採用されていた。

(四)  製帳社の委託業務と控訴人会社の放送業務との連繋関係並びに被控訴人らの労働の実態

<証拠>によれば、次の事実が一応認められ、これに反する疎明はない。

控訴人会社の放送業務の流れを概観すれば、別紙「放送準備から放送終了まで(昭和五〇年六月一日現在)」のとおりである。そして、これを詳述すると、以下のとおりとなる。

(なお、これは昭和五〇年六月一日当時のものであるが、製帳社が前記のとおり東筑印刷から業務を引継いだ昭和四六年四月一日当時から大きな差異はない。)

「1 番組の編成及び構成

(一)  基本番組表(月刊プロ)の作成

控訴人会社はフジテレビジョンネットワークに加盟しており、その基幹局であるフジテレビ(CX)をはじめ、東海テレビ(THK)、関西テレビ(KTV)テレビ西日本(TNC)から提供される編成情報に基づいて、ネット番組の編成がなされ、それと併行してローカル編成即ち自主製作番組の編成がなされ、一か月単位の放映番組の基本的枠組の編成案が編成・デクスにおいて決定される。この番組編成案は営業部に回され、同部は広告主を番組毎に開拓する作業にとりかかる。こうして編成・デスクと営業部とは密接な連絡をとりながら、各番組に広告主(いわゆるスポンサー)がついた段階で、番組編成に広告主を併記した一か月毎の放送内容を基本番組表(「月刊プロ」と通称される。)として決定する。

(二)サガテレビ放送番組(日刊プロ)の作成

編成・デスクでは月刊プロ及び控訴人会社の基幹局であるフジテレビをはじめ、関西テレビ、東海テレビ等から送られてくる一日の放送番組(それぞれのテレビ会社の「日刊プロ」)に基づき、一日の控訴人会社の放送確定番組の放送時間、番組内容を、放送開始から終了に至るまで順を追つて構成したサガテレビ放送番組(「日刊プロ」と通称される。)が放送一〇日前までに作成される。これは一般の新聞紙に記載・報道される各テレビ・ラジオの放送番組欄の控訴人会社の分に該当するものである。そこで、その原稿は製帳社従業員らのタイプ印刷を終えて各新聞社へ発送される。

右発送後日刊プロの誤りがわかると、日刊プロの追加訂正表が製帳社従業員らのタイプ印刷を経て、同様にして発送される。

(三)  放送進行表の作成

編成・デクスにおいては、日刊プロに基づき、控訴人会社の一日の放送番組の放送開始から放送終了までの番組名及びスポンサー名、番組の開始・終了時刻、フジテレビ等から提供を受ける番組で、番組本編の中にはさまるコマーシャルフィルムが含まれているかどうか、放送番組と放送番組の間(ステーションブレイク、「ステブレ」と略称される。)に入れる広告の広告主・時間・使用する広告素材の画と音の種別などを、時間は秒単位で明示した放送進行表の原稿を作成する。この原稿は製帳社従業員らによりタイプ印刷され、控訴人会社の編成・デスクは印刷された放送進行表の過誤がないことを確認したうえで、以後の放送準備作業を担当する編成放送課に仕事を引き継ぐことにより、番組編成・構成の仕事を終了することになる。

2 放送準備

編成放送課では、編成・デスクにより作成された放送進行表に基づき、放送に使用する各種素材を揃え、次の放送を担当する技術部に提供する仕事を担当する。この過程を詳述すると、以下のとおりである。

(一)  ステブレCMフィルムの編成・試写

一日の放送内容を詳細に表示している放送進行表に基づいて用意すべき放送素材の準備のうちステーションブレイクのコマーシャルフィルム(いわゆるステブレCMフィルム)の編成作業が製帳社従業員らに依頼される。ステブレCMフィルム素材は予めスポンサーから数種類のコマーシャルフィルムを一本にまとめたものが控訴人会社に送付されて収納箱(フィルムロッカー)に整理収納されている。製帳社従業員らは、その収納箱から放送進行表に基づき該当するコマーシャルフィルムが含まれる一本のCMフィルム素材を必要数だけ取り出して、該当するフィルム部分をフィルムスプライサーという機械にかけてスポンサー毎に切りとり(これを「フィルムスプライス」という。)、切りとられた該当フィルム部分を次々とつなぎあわせて編成することにより、その作業を一応終える。次いで、ステブレCMフィルム編成が放送進行表に基づき正確になされたかどうかを検査するために、製帳社従業員らはプロゼッターと呼ばれる映写機にかけ、秒数をはかりながら試写(この作業を「プレビュー」と呼んでいる。)し、間違いがないことを確認して放送編成課に引き渡す。ステプレCMに仮に間違いがあつたとしても、その影響する範囲は控訴人会社のサガテレビを視聴する範囲に限られるから、迷惑のかけ具合も次に述べる番組本編CMに比較するとはるかに小さいものである。

(二)  キューシート(Qシート)作成

控訴人会社がキー局であるフジテレビ等から提供を受ける番組には、番組本編の中にはさまるコマーシャルフィルムが予め完全に含まれている場合と、そうでない場合がある。後者の場合には控訴人会社の方で、未定の時間枠部分をコマーシャルフィルムで穴埋めしなければならない。控訴人会社では番組発局からの具体的指示(同じスポンサーの同じ品物でも、東京と九州では商品名が違うこともあるし、またどの時間にどのコマーシャルを使用するかが、放送開始に近接する日時まで未定の場合もある。)等を待つなどして、地方番組(ローカル番組)でない全国番組本編中のコマーシャル部分の控訴人会社独自のフィルム編成作業を行なう。これは、番組毎に番組及び各コマーシャルの開始・終了時刻・それぞれのスポンサーとコマーシャルフィルムの内容(時間は秒単位で)を特定されたキューシート(CUE SHEET、普通「Qシート」と称される。)と呼ぶ書面に記載される。従つて、一日の放送予定の全容は、前記した放送進行表とQシートが完備して始めて明らかになる。(というわけで、放送進行表にはQシートを参照しなければならない箇所には、「Qシート参照」と注記されている。)

そして、このQシートに基づき、控訴人会社の編成、放送課員自らが、ステブレCM用素材とは違つた場所にまとめて収納整理してあることから、製帳社従業員らの行うステブレCM編成作業と同じ作業要領でコマーシャルフィルムの切りとりとつなぎあわせて編成する作業、ひきつづく試写を行い、番組本編CMフィルムの編成作業は終了する。ことの性質上、番組本編CMに間違いがあると影響する範囲も全国的になり、ステブレCMに比較しはるかに広くなる筋合である。また、ステブレCMの内容は放送日の三か月ないし一年前に決定しているし、そのCMフィルム編成作業の基になる放送進行表も放送日前二日には完成しているといつた具合で時間的余裕は十分あるのに比し、番組本編CMの内容は番組発局からの具体的指示が遅くなること等により確定が遅れ、時間的余裕がない場合も起る。

(三)  パンチテープの作成

ところで、控訴人会社においては、一日の放送内容は自動番組送出装置(ATS装置)により自動的に放映されるシステムになつているため、同装置を働かせるために、機械の行う内容と順序を定めたプログラムを作らなければならない。そこで、放送の全容を具体的かつ詳細に記載した放送進行表及びQシートに基づき、編成放送課ではQシートパンチ原稿というものを作成する。

作成されたQシートパンチ原稿は製帳社従業員らに渡され、製帳社従業員らは右原稿に基づき控訴人会社所有のニアックライターと呼ばれる機械を使つて、テープに穴をあける作業をする。この作業従事者がキーパンチャーである。こうして作成されたものがパンチテープといわれるものであるが、ATS装置はこのパンチテープどおり作動するものであるから、その重要性はいうまでもなく、ここでのミスは致命的である。そこで、キーパンチャーがニアックライターを使つて穴をあける作業をするとき、パンチテープが作成されると同時に、自動的に、記号化されたパンチ原稿完成品照合表ともいうべき書類(「パンチアウト」とよばれる。)が作成される仕組になつている。

編成放送課では、右照合表によりパンチテープの正確性を確認する。

(四)  テロップの作成

(1)  控訴人会社のサガテレビでは、昼(一二時五〇分)、夕方(一七時五〇分)、夜(二三時)と三回のニュースを自主製作のうえ放送しているが、ニュースについては佐賀新聞社及び西日本新聞社から持ち込まれた原稿を控訴人会社の編成・デスクで検討したうえ、放送を可とするものについては写植タイトル連絡表に文字とその大きさ等を記入して製帳社従業員らに手渡される。製帳社従業員らは右連絡表に基づき、控訴人会社所有の写植機で打ち、出来上つたもの(これが「ニューステロップ」といわれる。)を担当社員に手渡すことになる。

(2)  その他番組宣伝、天気予報、告知、催し物なども、控訴人会社は必要に応じて写植タイトル連絡表によつて製帳社従業員らにテロップの作成を依頼し、製帳社従業員らはその依頼に忠実にテロップを作成し、交付する。

(五)  放送素材の放送室持込み

右のようにして編成放送課で放送準備されたパンチテープ、一本のフィルムに編成しおえたステブレCMフィルム及び番組本編CMフィルム、各種テロップ等の放送素材は、必要に応じて放送室に持ち込まれ、放送担当の技術部に手渡される。

3 放送

技術部では編成放送課から受けとつた放送素材を放送機器にセットし、パンチテープもATS装置にセットし、時間の進行にあわせて放送する。

4 放送後の処理

(一)  放送終了素材の返却

放送終了した放送素材は、技術部から編成放送課へ返却される。一本のフィルムにまとめられているステブレCMフィルムについてはその作業をした製帳社従業員らに、フィルムを切りとり(これを「バラシ」と呼んでいる。)、それを更にスポンサー毎につなぎあわせ、ステブレCMフィルム編成前の状態にして取納箱に戻すことが依頼される。ステブレCMフィルム以外の放送素材は、編成放送課員において解体と整理がとり行われる。

(二)  放送確認書の作成

他方、放送終了後は、素材返却とは別に、現実に放送された通り表示する最終放送進行表の原稿が編成課で作成され、これに基づいて、広告主に対し契約通り放送したことを証明するため放送日、放送時間、スポンサー、代理店、放送番組等を記載した放送確認書を作成して各広告主に発送しなければならないが、この放送確認書の作成はすべて製帳社従業員らに依頼され、製帳社従業員らはこれを書きおえると控訴人会社の営業部へ納めることとなる。広告料収入の基本になる書類ということができる。

5 雑印刷業務

控訴人会社の社員の中には、タイピストが皆無であつたので、製帳社従業員らは、日刊プロ、日刊プロの追加訂正表、放送進行表のタイプ印刷の外、辞令書、覚書、企画物の案内状、放送日誌その他の雑印刷一般をも控訴人会社の総務を介して依頼され、定時的な日刊プロ、放送進行表のタイプ印刷の合間をぬつて、右雑印刷一般の業務に従事する。」

前記のとおり、製帳社が控訴人会社から委託を受けて行う本件各委託業務は、いずれも控訴人会社の放送業務の組織と一体をなして密接に関連しているところから、その作業場所は控訴人会社の社屋内にパネルやロッカーにより間仕切りされた場所で行われ、その業務の遂行上必要があれば、控訴人会社の担当職員から直接具体的指示がなされ、また、委託業務の作業にミスがあれば、控訴人会社の担当課長から直接注意を受けることもあつた。また、委託業務のうち四種業務の作業に必要な写植機、カラーテロップ焼付機、ニアックライター、プロゼッター、フィルムスプライサー、検尺機、プレビュー機等の機械、器具は、控訴人会社所有のものを使用して行われ、パンチテープ、テロップ印字紙、現像液、安定液等の必要な資材、消耗品も控訴人会社から提供された。

(控訴人ら製帳社従業員の作業場所が控訴人会社社屋内であり、その作業内容が(一)パンチテープの作成(控訴人会社の編成課員から渡されたパンチ原稿に基づきニアックライターでテープに打ち込むキーパンチャーの作業)(二)写植機によるニューステロップの作成(控訴人会社の社員から渡された写植タイトル連絡表に基づき写植機でテロップを作成する作業)(三)スポットCMのフィルムスプライス及びプレビュー(控訴人会社の社員から渡された放送進行表に基づき、フィルムを切つたり、つないだりする作業)(四)タイプ印刷等(控訴人会社の編成課員、営業部員等から原稿に基づき、放送進行表、日刊プログラム等をタイプ印刷したりする作業)(五)放送確認書の記入(控訴人会社の編成課員、営業部員から渡された最終放送進行表等の資料に基づき、放送確認書に必要な事項を記入する一般事務)以上五種目に亘ること、右作業遂行上必要な写植機、カラーテロップ焼付機、ニアックライター、プロゼッター、フィルムスプライサー、プレビュー機等機械、器具は控訴人会社所有のものが使用され、更に作業上必要な事務用品も控訴人会社所有のものが使用されたことは、当事者間に争いがない。)

被控訴人ら製帳社従業員は、その作業場が控訴人会社社屋内とされていたことから、作業室以外の同社屋内の便所等は勿論のこと控訴人会社所有のロッカー等の利用も許されていた。そして、その出退勤時間を打刻するタイムレコーダー及びタイムカードも、控訴人会社所有のものが使用された。(ただし、タイムカードのみは昭和四九年一〇月ないし一一月頃製帳社のものに切り替えられ、その前後を通じて出退勤の管理及びこれに基づく賃金計算は、終始製帳社が行つていた。)また、その勤務時間及び休日は、紺屋町の製帳社の工場に勤務する従業員とは全く別個に定められ、同従業員との間に人事異動が行われたりする交流はなかつた。

他方、被控訴人ら製帳社従業員は、サガテレビ内において「製帳社の人」として一つのグループを形成し、山崎の包括的な監督のもとに、業務委託契約によつて製帳社の業務と定められた範囲の作業をその責任において処理し、人数についても控訴人会社から指定されることはなく、故障者のある場合は製帳社の負担でパートタイマーを入れ、或いは山崎自身が作業に就いてでも所定の業務を完遂し、これを控訴人会社の責任による処理に委ねたことはなく、また、各人の担当する作業種目や休日・時間外の勤務割なども控訴人会社の業務の状況に応じてグループ内で自主的にこれを定めており、グループ全体としても個々人としても、控訴人会社の組織上特定の部・課ないし係に所属又は所管を定められるということはなく、従つてそのような職制を通じての身分上の監督を受けることもなかつた。

(五)  製帳社における労働紛争の開始と労働組合の結成等

<証拠>によれば、次の事実が一応認められ、これに反する疎明はない。

日本民間放送労働組合会(以下、「民放労連」ともいう。)は、昭和二七年に結成され、昭和五一年現在において、各民間放送局の単位労働組合七一組合(組合員数約一万名)、関連下請企業の単位労働組合三四組合(組合員数一〇〇〇名)の合計一〇五組合(組合員数約一万一〇〇〇名)が加盟している全国的な連合体組織である。

控訴人会社に雇傭された労働者は、昭和四六年一一月「サガテレビ労働組合」(以下、「STS労組」ともいう。)を結成し、その後民放労連に加盟していた

しかして、民放労連は、テレビ放送会社が正社員の外に、いわゆる臨時工社外工に類する者(以下、「下請従業員」ともいう。)を数多く使用していることに関し、これら下請従業員が正社員に比して劣悪な労働条件を強いられて差別されており、かかる下請従業員の存在が正社員の労働条件の向上を阻んでいる、との認識に立ち、昭和四〇年頃から「下請による搾取強化反対」の要求を掲げ、昭和四二年頃から、下請従業員の組織化を図るとともに差別雇傭反対、社員化闘争を指導して来ており、昭和四九年に入ると、右の下請従業員問題は職安法四四条に定められた労働者供給事業の禁止に抵触するものであるとの見地に立ち、その摘発闘争と下請従業員の組織化とを図り、いわゆる社員化闘争を更に前進させることを運動方針の一つに据えることを決定して、これを全国下部組織に指示した。

昭和四八年から、STS労働組合執行部は、控訴人会社においていわゆる下請従業員として本件委託業務に従事している製帳社従業員に対し、同人らに課せられている労働条件の差別を撤廃させるため労働組合を結成する必要性のあることを学習させるべく、その教宣活動に乗り出した。

一方、製帳社従業員として雇傭されて本件委託業務に従事していた被控訴人らの側においても、同一社屋内で放送業務に従事している控訴人会社の正社員に比して、自己らの賃金、賞与が相当程度低額であることに不満を抱き、労働条件向上のために労働組合結成の必要のあることを感じ始めていた。かくして、同年七月頃から、被控訴人ら本件委託業務に従事する製帳社従業員(以下、右の意味で用いる場合は、「被控訴人ら製帳社従業員」という。)は、連帯して山崎に対し頻繁に交渉を求めて、賃金、賞与の増額を要求するようになり、以来STS労働組合執行部の助言や指導の下に、山崎との交渉にのぞみ、また、各種闘争活動を活発化させるようになつた。

馬場悦子を除く被控訴人ら製帳社従業員は、昭和四九年一一月、山崎巖に対し、年末賞与増額と年末年始の休日手当及び代休に関する要求を書面をもつて申し入れ、この要求をめぐり山崎と交渉を重ね、更に、昭和四九年三月、製帳社宛要求書をもつて、昇給(基本給の一律二万円アップ等)、勤務時間短縮、完全週休二日制実施その他の待遇改善要求を出して、その交渉を求めるようになり、同年四月一八日、労働組合を結成するとともに、結成宣言を公表し、翌一九日には馬場悦子も組合に加入し、ここに被控訴人ら製帳社従業員九名全員加盟の労働組合が形成され、これは直ちに山崎に通知された。同組合は、同月二七日民放労連に加盟し、正式名称を「民放労連サガテレビ佐賀製帳社労働組合」(以下、(製帳社労組」ともいう。)と名乗つた。

<証拠>によれば、次の事実が一応認められ、<反証排斥略>、他にこれを左右するに足る疎明はない。

製帳社においては、昭和四七年七月、四種業務についての総括的責任者であつた秋山玲子が退職した後、同人に代る責任者を特に設けずにいたところ、昭和四八年暮頃から、業務の停滞が次第に目立つようになり、控訴人会社より後任の責任者を設けるように申入れられた。そこで、山崎は、昭和四九年四月、石橋春志を本件委託業務の総括責任者に選任して、同人を被控訴人ら製帳社従業員に紹介し、控訴人会社の社屋内に配置したところ、被控訴人らはこれに反発し、石橋春志に対し激しい嫌がらせを行い、同人が高令者であることもあつて、これに耐え切れず、一日で退職してしまつた。その後、山崎は、新川敏男を製帳社総務課長の肩書で任用し、本件委託業務並びに被控訴人ら従業員の監督に当らせることとし、同年六月七日から新川を控訴人会社社屋内に派遣し、これを被控訴人ら従業員にも告知した。新川敏男が二カ月余勤務し同年八月中旬頃退職したため、山崎は、川崎初男をその後任者として採用した。

<証拠>を綜合すると、次の事実が一応認められ、これに反する疎明はない。

昭和四八年秋から四九年にかけてのいわゆるオイルショックに伴う経済混乱により、控訴人会社においても、経費削減による合理化を迫られるようになり、昭和四九年五月末頃、本件委託業務のうち、放送進行表のタイプ印刷をゼロックスによる複写に切り替えることを山崎に申し入れた。

山崎は、賃金増額等待遇改善について、同年四月二二日以降多数回に亘り製帳社労組と団体交渉を重ねていたので、その交渉の中に右タイプ印刷のゼロックス化問題を持ち出し、本件委託業務のタイプ部門従事者四名を紺屋町の製帳社工場内に移すことを申入れ、同労組側と折衝を重ねたが従業員側が紺屋町に移ることを肯んじないため、結局、タイプ部門の移転を断念し、控訴人会社も放送進行表を従前どおりタイプ印刷で行うことを了承した。かくして、同年六月五日、山崎は、待遇改善要求に対し、現在の基本給を基礎にこれに勤続年数修正額を加算した額に二〇パーセントのアップをし、更に一律に一万円の上積み加算をすることで賃上交渉を妥結し、勤務時間について九時三〇分より一七時三〇分までと短縮したうえ、昼の休憩時間については一二時より一三時三〇分までを既得権とする製帳社労組側の要求を容れて、交渉は妥結した。

(六)  控訴人会社と製帳社との間の本件業務委託契約の改訂

<証拠>によれば、次の事実が一応認められ、これに反する疎明はない。

控訴人会社と製帳社との間に取り交されていた本件業務委託契約書は、テレビ西日本と東筑印刷間に交わされていた契約書の書式をそのまま踏襲して作成された東筑印刷との間の契約書の書式に若干の手直しを加えて作成されたものであつたため、実情に合致しない条項や死文化した条項が残されていて、早晩改訂する必要のあるものであつた。しかして、昭和四八年秋から四九年にかけてのオイルショックによる紙不足、物価騰貴等の経済混乱の中で、控訴人会社は、製帳社と委託業務に関し、昭和四八年度印刷料の単価改定はしたものの委託料をそのまま据え置いていたので、本件業務委託料の大幅値上げを要請される情勢にあつた。他方、製帳社内においても、被控訴人ら本件委託業務に従事する従業員が待遇改善要求を提出するようになつていた。かかる情勢と相前後して、控訴人会社において、STS労組との団交開始前の雑談の際に、民間放送局の中に下請関係で職安法違反問題が起きている、控訴人会社においても問題となるのではないかとの指摘を受ける一方、大阪の朝日放送では電話交換業務の外部委託が職安法違反として問題とされている旨の業界情報にも接していたので、朝日放送の事案を現地調査して、製帳社との業務委託が同法に牴触するものであるか否かを検討することとした。

控訴人会社の総務部次長姫野毅が、大阪の朝日放送を訪ね、調査をなくした結果、(イ)製帳社に委託している業務は受託業者のみが担当遂行していて、朝日放送のように正社員と下請従業員とが同一業務を共同して遂行している形態にはなつていないこと、(ロ)出退勤等の管理は、製帳社の方において独自に行なつており、控訴人会社は全く関与していないこと、(ハ)製帳社従業員は山崎の指揮監督下に置かれていて、控訴人会社において指揮監督はしていないこと、(ニ)製帳社従業員がストライキを行つた際に、山崎が責任をもつて委託業務を代つて行い、控訴人会社の社員が代替して就労するようなことがないこと、(ホ)控訴人会社が、製帳社従業員に対し控訴人会社の社名入りのジャンパーを貸与したりしていないことなどを理由として、本件業務委託は、朝日放送の場合と根本的な相違点を有し、基本的には職安法に違反するものではないと判断したが、細部についてみると、製帳社が本件委託業務に使用している写植機、ニアックライター、カラーテロップ機等の機械器具が控訴人会社所有のものであることが問題視される虞れがあることに気付き、控訴人会社池田常務に対し、製帳社との業務委託に関し職安法違反の点はないが、前示各機械を無償使用させていることを含め、職安法違反の誤解を招かぬようこの際業務委託契約書を全面的に、改訂正、整備してはどうかと進言した。池田常務は、右進言を容れて、姫野次長に本件業務委託契約書の改定を指示した。かくして、種々検討が加えられた結果、昭和四九年一一月二九日、控訴人会社と製帳社との間に左記の各契約条項をもつてする業務委託契約書が締結された。

「控訴人会社(以下「甲」という。)と製帳社(以下「乙」という。)とは甲のテレビジョン放送番組編成ならびに放送用日刊印刷物の印刷業務に関し、次のとおり契約を締結する。

第一条 甲は乙に甲のテレビジョン放送番組編成ならびに放送用日刊印刷物の印刷に関する業務(第三条)を委託し乙はこれを受託した。

第二条 甲は乙の業務遂行のために必要な作業を乙に提供し、乙はその借用料として家賃月二万円(水道光熱費を含む)を甲に支払う。

第三条 委託業務の種類は下記のとおりとする。

1  放送番組編成業務(以下五種類業務とする)

(1) スポットCMのフィルムスプライスおよびプレビュー

(2) 放送確認書の記入

(3) 写真植字機によるニューステロップの作製

(4) 自動番組制御装置用パンチテープの作製

(5) 放送進行表の複写作業(リコーPPC使用)

2  印刷業務

(1) テレビプログラムの印刷

第四条 印刷業務に要する機械は乙が設置する。

第五条 乙は業務の遂行にあたり常時責任者をおき、作業の受付、従業員の指揮監督にあたるものとする。

第六条 本契約による委託料をつぎのとおりとする。

1  五種業務月額 五〇万円

2  印刷業務については基本単価に基づき出来高に応じて支払う。

テレビプログラム原紙一枚につき

日刊プロ九〇〇円、進行表八〇〇円

第七条 甲は前記委託料を、当月分を翌月末日に支払う。

第八条 乙は甲の構内において使用する従業員に対して、労働基準法、労働安全衛生法、労働災害補償保険法、労働組合法等使用者としての全責任を負担していることを確認する。

第九条 甲または乙は、相手方がこの契約に違反した場合その是正を催告し、相手方がこれに応じなかつた場合はこの契約を解除し損害賠償を請求することができる。また乙はその従業員が行う業務上の過失についてすべての責任を負い甲の施設を破損または紛失したときはその損害を賠償する。但し甲が止むを得ないと認めた場合はこの限りでない。

第一〇条 この契約の内容が実情にそわなくなつたときには契約期間中でも甲乙協議のうえ変更することができる。また疑義を生じた場合は信義誠実の原則に従つて互いに協議のうえ処置する。

第一一条 この契約の期間は昭和四九年四月一日より昭和五〇年三月三一日迄とする。

ただし双方共三ケ月の予告期間をもつて本契約を解約することができる。なお期間満了までに双方とも意思表示をしないときは自動的に一ケ年延長するとのとし、その後もこの例にならう。」

控訴人会社は、更に、本件業務委託に関し、職安法違反の誤解を避けるべく、製帳社に対し、前記の委託業務に使用する写植機、ニアックライター、カラーテロップ機の買取と同じく委託業務に使用する資材、消耗品の有償化の申入をなし、双方が検討し合うことにしていたが、本件業務委託契約が解除されたことにより遂に実現には至らなかつた。

(七)  製帳社内における労働紛争の激化と本件業務委託契約の解除及び被控訴人らの解雇

<証拠>によれば、次の事実が一応認められ、<反証排斥略>、他にこれを左右するに足る疎明はない。

製帳社労組は、先の賃金増額等待遇改善要求に関する団体交渉継続中の昭和四九年五月三一日、夏季一時金を新基本給の七倍プラス一律二〇万円支給及び夏季休暇連続一〇日間の設置を主内容とする要求書を製帳社宛提出し、また、山崎が監督責任者として派遣配置した新川敏男を嫌つて対立を深め、労使紛争が次第に激化し、同年六月一四日、七月一日と二回に亘りストライキを行つたほか、同年七月三日から残業拒否闘争を実施し、同月三〇日、夏季一時金基本給の1.34倍プラス一律五〇〇〇円、及び夏季休暇三日間等として交渉は妥結した。

製帳社労組は、続いて、同年九月二〇日、製帳社に対し、インフレ手当として基本給の二カ月分、交通費全額支給を主内容とする要求書を提出し、更に、同年一一月一日、冬季一時金基本給の七倍プラス一律二〇万円支給、年末年始休日を一二月二八日から一月五日までとすること、年末年始特別手当一日七〇〇〇円、完全週休二日制早期実現等を主内容とする要求書を提出し、同年一一月五日に二時間、同月一九日に一時間、同月二六日一八時から翌二七日一〇時までストライキ及び残業拒否、同月一二月一二日に一時間、同月一六日に二時間、同月二〇日から二二日にかけて五六時間のストライキを実施し、同月二七日、山崎との間で、冬季一時金は基本給の二カ月分プラス一律一万円の上積み、但し、出勤率に応じて二カ月分の算定を考慮する、年末年始の休日は一二月三〇日から一月四日までとすることで妥結した。

製帳社労組は、昭和五〇年三月三日、製帳社に対し、昇給は五万円、それに年令から一八才を差引いた数字に七六〇〇円を乗じて得られる額を上積みすること、退職金を一〇年勤務者で五〇〇万円、二五年勤務者で二〇〇〇万円に改訂すること等を主内容とする要求書を提出し、同月二七日、四月九日とそれぞれ残業拒否を行い、同月一〇日に三〇分間のストライキ、同月一五日から一七日までストライキを実施したほか、同月二三日から同月二六日まで連日ストライキを実施し、更に、五月二九日に一時間三〇分のストライキを行つた。

山崎は、製帳社労組が次々と待遇改善要求を持ち出し、そのため多数回に亘る団体交渉を求められるばかりか、前記のとおりストライキ、残業拒否が頻発し、昭和五〇年四月二三日頃からはこれが連日実施され、ストライキが実施されない時には、被控訴人ら製帳社従業員が次々と休暇をとつて業務を停滞させ、あるいは、山崎のなす業務上の指示に殊更逆らい緊急を要する作業を放置して他の業務に従事し、止むなく山崎自らが川崎初男とともに急を要する作業を行おうとするとこれを妨害する行為に出たりするため、これとの応接に奔命させられて、遂に困憊の極に達するとともに本件委託業務遂行の意欲をも失うに至り、同年六月三日、控訴人会社に対し同月同日付をもつて本件業務委託契約を解除したい旨の申入をなし、控訴人会社も右申入を諒承し、ここに右業務委託契約は解除された。

かくして、製帳社は、同年六月五日付内容証明郵便をもつて被控訴人ら製帳社従業員に対し、事業場閉鎖を理由に解雇する旨通知し、右従業員らに解雇予告手当を支給し、更に控訴人会社社屋内から製帳社所有のタイプ印刷業務に必要な機材一切を持ち去つた。製帳社は、同年七月二八日に右従業員らに退職金を支払い、失業保険金受領に必要な離職証明書を交付した。

(八)  被控訴人らの解雇後の控訴人会社との折衝

<証拠>を綜合すると、次の事実が一応認められ、これに反する疎明はない。

製帳社が被控訴人ら製帳社従業員を解雇しタイプ印刷用の機械器具類を搬出した昭和五〇年六月五日の夜から翌六日明け方にかけて、控訴人会社常務取締役池田進、同総務部次長姫野毅とSTS労組との間において、製帳社に委託していた業務の今後の処置及び被控訴人ら製帳社従業員の身分保障について交渉が行われた。その交渉の席上、STS労組側から、被控訴人ら製帳社従業員の正社員化、同人らとの直接の契約の要求が出されたが、控訴人会社側は、一貫して、被控訴人ら製帳社従業員の処遇の問題は他企業の従業員問題であつて控訴人会社の関知するところではないし、その身分の保障をなしうべき立場にもない、被控訴人らとの直接の契約はしない、との態度を取り続け、両者の主張は平行線をたどり、交渉は難航したが、最終段階に至り、STS労組側から、被控訴人ら製帳社従業員の正社員化要求を引込める、同人らの仕事先確保を最優先にする旨の提案がなされ、かくして、控訴人会社との間に、「(イ)製帳社に代る経営者を探し、本件委託業務に関しては経営者の交代という形で行う。(ロ)従業員については、原則として、被控訴人ら製帳社従業員八名を継続して雇傭して貰うよう新経営者に要請する。(ハ)新経営者との間に新たに業務委託契約が締結され、新経営者による新会社が発足するまで被控訴人ら製帳社従業員八名は就労しない、但し、その新発足までの期間の収入を補償する。」との点について合意に達した。なお、その際、控訴人会社側から同時に提示されていた「右新会社の作業場は、新経営者と打ち合わせのうえ現状を変更することがある。」との条項については、合意に達しなかつたものの、この点に関し、控訴人会社の側においては、新経営者が定まり、被控訴人ら製帳社従業員八名全員の再雇傭が実現すれば、最終的には労組側の了解をえられる問題と考えていた。

しかして、新経営者の選定は急を要する問題であつたところ、STS労組側からその候補者として福博印刷の社員である橋田雅夫の名が挙げられ、六月六日、姫野総務部次長が、STS労組の石丸委員長とともに、橋田雅夫と面談し、本件業務の委託及び控訴人ら製帳社従業員八名の雇傭を依頼したが、六月一〇日に、右橋田から、印刷部門のみの委託を受け、雇傭する従業員は二、三名にとどめたい旨回答が寄せられ、橋田の意向は、四種業務及びタイプ印刷業務を一括して受託し、被控訴人ら製帳社従業員八名を雇傭するとの条件を充足するものでなかつたため、同人との交渉は打ち切られた。

STS労組側から同人以外には候補者の推薦がなく、控訴人会社は、新経営者の選定に難渋したが、当時、たまたま、池田常務のもとに学校の後輩に当たる大島勲から就職の幹旋方の依頼が出されていたことから、同人に本件業務委託を申入れることとなつた。

大島勲は、学習研究社佐賀支社長を四年間程つとめて昭和四九年に退職し、その後佐賀での就職先を探していたものであつたが、学習研究社に就職する前には株式会社リコーの宣伝部に勤務し、電波広告媒体及び印刷媒体については一応の知識を有していたことから、控訴人会社の求めに応じて本件委託業務を引受けることとした。

かくして、大島勲は、控訴人会社とSTS労組との間に成立した前記の基本的合意事項にそつて新規に事業を発足させるべく、昭和五〇年六月一三日から一八日までの間に三回に亘つて、被控訴人ら製帳社労組員八名と面談した。ところが、被控訴人ら製帳社労組八名は、大島に対し「タイプ印刷の社外の仕事を持ち込まないこと、四種業務及びタイプ印刷の仕事を外注しないこと、労働条件、賃金をサガテレビ社員と同じにせよ(従来どおりの場所で勤務すること)」等の諸要求を記載した要求書を提出し、将来の展望として印刷会社を指向し、そのため控訴人会社の社屋外に独立した事務所、事業所を設ける構想を画いていた大島の意向と真向から対立し、大島は、勤務場所の問題を一時棚上げして、その他の勤務条件、就業規則の骨子に関して交渉することを提案してみたが、被控訴人ら製帳社労組員側が就業場所についての主張を頑として譲らず、この点が解決されない限り他の交渉にも応じないとの態度を固執したため、話合はなんら進展しなかつた。

大島は、被控訴人ら製帳社労組員との話合が進展をみないものの、とりあえず、控訴人会社との間に四種業務及びタイプ印刷業務の業務委託契約を締結し、新事業を発足させることを決意し、同月一八日、控訴人会社と「業務ならびに製造委託契約書」を締結した。

同月一九日、大島は、再び被控訴人ら製帳社労組員と会談したが、結局勤務場所の問題をめぐり堂々巡りの論議が交されるのみで、交渉の進展が見られないため、止むなく、被控訴人らに対し、新会社に来て呉れなければ新しい人を雇入れて本件委託業務を遂行する決意であることを披露し、併せて、新会社において勤務することを納得して貰えるのであれば雇傭の意思のあることを示して会談を打ち切つた。

一方、同月二〇日、控訴人会社は、「旧佐賀製帳社従業員八名が新経営者との雇傭契約に応じなかつたとしても、これ以上の幹旋はしない。右八名の去就が宙に浮いたとしても、控訴人会社としては何ら関知せず、今後控訴人会社に無関係の問題として処置する。」旨の社告を掲示した。

大島は、控訴人会社から請負う四種業務及びタイプ印刷業務を中心として印刷会社を設立するとの構想のもとに、事務所、事業所を賃借するとともに、必要な機器、機材の購入、従業員の募集を行つた。タイプについてはタイプ学校の卒業生ないし既にタイプの経験を有する者を採用し、キーパンチについても他の企業において既にキーパンチの経験があり必要な技能を有しているキーパンチャーを採用したので、ともに特段の技術指導を行う必要はなかつた。写植テロップについては、その技能修得者を採用することができなかつたので、当初他企業に外注してその業務を遂行するとともに、写植機メーカーから技術指導員の派遣を受けて新規採用者に技術指導教育を施した。また、大島は、同年七月二八日、資本金五〇万円で有限会社佐賀ビジネス印刷社を設立しその登記を了し、以後同社の業務としてその事業を行つた。

三以上の認定事実に照らし考察するに、被控訴人ら製帳社従業員は、事業場内下請労働者として控訴人会社に派遣され、その作業の場所を控訴人会社社屋内と限定されて労務を提供していたのであるから、控訴人会社の職場秩序にしたがつて労務提供をなすべき関係にあつたばかりでなく、その各作業が控訴人会社の行う放送業務と密接不可分な連繋関係においてなさるべきところから、各作業内容につき控訴人会社社員から具体的な指示を受けることがあり、また作業上のミスについても控訴人会社の担当課長から直接注意を受けるなど控訴人会社から直接作業に関し指揮、監督を受けるようになつていたものであつて(四種業務の現場責任者である秋山玲子の退職後も同人に代る現場責任者を特に選任することなく放置していたことからもこれを窺うことができる)、控訴人会社との間にいわゆる使用従属関係が成立していたものであり、したがつて、この使用従属関係の形成に伴い、控訴人会社が、被控訴人ら製帳社従業員に対し、一定の使用者責任、例えば事業場内下請労働者に対する安全配慮義務等を課せられる関係にあつたことは否定することができない。

しかし、製帳社は、控訴人会社から資本的にも人的にも全く独立した企業であつて、控訴人会社からも被控訴人らからも実質上の契約主体として契約締結の相手方とされ、現に被控訴人ら従業員の採用、賃金その他の労働条件を決定し、身分上の監督を行つていたものであり、したがつて、派遣先企業である控訴人会社の労務担当代行機関と同一視しうるような形式的、名目的な存在に過ぎなかつたというのは当らない。また、他方、控訴人会社は、製帳社が派遣労働者を採用する際にこれに介入することは全くなく、かつ、業務請負の対価として製帳社に支払つていた本件業務委託料は、派遣労働者の人数、労働時間量にかかわりなく、一定額(ただし、テレビプログラム原紙、日刊プロ、進行表の印刷業務については一枚当りの単価額による出来高払い)と約定していた(これらの金額が製帳社従業員に支払われる賃金総額と直接関連するものとして算出決定されたことを窺わせる資料はない。)のであるから、控訴人会社が被控訴人ら派遣労働者の賃金額を実質上決定していたということは到底できない。したがつて、控訴人会社と被控訴人ら派遣労働者との間に黙示の労働契約が締結されたものと認める根拠は見出し得ないというほかはない。(昭和四六年三月に控訴人会社と製帳社との間に締結された業務委託契約書第六条(4)には「製帳社は、製帳社の従業員に異動があつたときは、遅滞なくその氏名と経歴を控訴人会社に届出なければならない」旨定められているが、原審証人嶋田多智徳、同山崎巖の各証言によれば、製帳社においては、控訴人会社に派遣すべき従業員に異動があつたときは、控訴人会社に対し、右異動を口頭で申出、新採用従業員を紹介するにとどまり、これ以上に新採用従業員の履歴書を控訴人会社に提出するなど控訴人会社の社員採用に類するような届出行為は行われていなかつたことが、一応認められる。)

なお、被控訴人らは、製帳社と控訴人会社との間に締結された本件業務委託契約は職安法四四条に違反し、公序良俗に反する無効なものであり、製帳社と被控訴人らとの間の労働契約は右違法な労働者供給契約(本件業務委託契約)と結合しその違法性を隠ぺいする役割を担つているもので、労働基準法六条に違反し、公序良俗に反し無効である旨主張するので、付言する。なるほど、成立に争いのない疎甲第三七号証、第四三号証及び原審証人石丸泰男の証言によれば、職安法四四条、職業安定法施行規則四条の規定は労働行政上比較的厳格に解釈運用されていて、本件委託業務に従事していた製帳社従業員の労務提供について(イ)労働者の作業上の指揮監督(ロ)事業主自ら提供すべき機械、設備、器材もしくは作業上必要な資材の二項目につき職安法違反の疑いがある旨佐賀県職業安定課から指導を受けたことが一応認められる。しかしながら、仮に、製帳社の本件業務委託が職安法四四条に違反するものであつたとしても、それだけの理由では、前叙のような事実関係のもとにおいて、被控訴人の製帳社従業員と製帳社との間に締結された雇傭契約が公序良俗ないし労働基準法六条に反し無効であり、真実の雇傭関係は控訴人会社との間に成立するものということはできない。

四以上のとおり、本件全疎明によるも被控訴人らと控訴人会社との間に明示的にも黙示的にも雇傭契約が締結されたものとは認められないから、被控訴人らが控訴人会社従業員の地位を有することを仮に定めるべきことを求める本件仮処分申請は、その被保全権利の存在につき疎明がないものというほかなく、また保証立てさせることをもつてこの疎明に代えるのも相当でないので、これを却下すべきである。これと趣旨を異にする原判決は失当として取消を免れず、本件控訴は理由がある。

五よつて、原判決を取消し、被控訴人らの本件仮処分の申請を却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九条、九三条一項を適用して、主文のとおり判決する。

(蓑田速夫 金澤英一 吉村俊一)

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